心と身体を繋ぐ

『アルケミスト』スプーンの油とは

こんばんはtsunaguyoga のerinaです★

 

最近、アルケミストという小説を友人から紹介され、読んでいます。その中でとても心に残った一節があったので、紹介したいと思います。

主人公の少年が、夢を叶えるために旅に出て、その先々で出会う人達とのやりとりが見所となっています。

 

▼▼▼

ある店の主人が、世界で最も賢い男から
幸福の秘密を学んでくるようにと、息子を旅に出した。

その若者は砂漠を四十日間歩きまわり、
ついに山の頂上にある美しい城に行きついた。
賢者が住んでいたのはそこだった。

しかし、この若者はすぐに賢者に会えたわけではなく、
城の一番大きな部屋に入ってゆくと、そこでは、
さまざまな人が忙しそうに働いているのを見た。
貿易商人たちが行ったり来たりしていた。
隅の方では、 人々が立ち話をしていた。
小さなオーケストラが、軽やかに音楽を奏でていた。
テーブルには、その地方で一番おいしい食べ物を盛りつけた皿が、いっぱい並べられていた。

賢者は一人ひとり、すべての人と話していたので、
少年は二時間待って、やっと自分の番がきて、賢者の注意をひくことができた。


賢者は注意深く、少年がなぜ来たか説明するのを聞いていたが、
今、幸福の秘密を説明する時間はないと、彼に言った。

そして少年に、 宮殿をあちこち見てまわり、二時間したら戻ってくるようにと言った。
「その間、君にしてもらいたいことがある」と、
二滴の油が入ったティースプーンを少年に渡しながら、賢者は言った。


「歩きまわる間、このスプーンの油をこぼさないように持っていなさい。」


少年は宮殿の階段を登ったり降りたりし始めたが、
いつも目はスプーンに釘づけだった。
二時間後、彼は賢者のいる場所に戻ってきた。

「さて、わしの食堂の壁に掛けてあったペルシャ製のつづれにしきを
 見たかね。庭師のかしらが十年かけて作った庭園を見たかね。
 わしの図書館にあった美しい牛皮紙に気がついたかね?」と賢者がたずねた。

少年は当惑して、「実は何も見ませんでした」と告白した。
彼のたった一つの関心事は、賢者が彼に託した油をこぼさないことだった。
「では戻って、わしの世界のすばらしさを見てくるがよい。
 彼の家を知らずに、その人を信用してはならない」と賢者は言った。

少年はほっとして、スプーンを持って、宮殿を探索しに戻った。
今度は、天井や壁にかざられたすべての芸術品を鑑賞した。
庭園、まわりの山々、花の美しさを見て、その趣味の良さも味わった。
賢者のところへ戻ると、彼は自分の見たことをくわしく話した。

「しかし、わしがおまえにあずけた油はどこにあるのかね?」と賢者が聞いた。
少年が持っていたスプーンを見ると、油はどこかへ消えてなくなっていた。
「では、たった一つだけ教えてあげよう」とその世界で一番賢い男は言った。

 

「幸福の秘密とは、世界のすばらしさを味わい、
 しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ」


パウロ・コエーリョアルケミスト」より
訳=山川 紘矢, 山川 亜希子

 

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ここでいう『スプーンの油』とは…

一体何なのかを考えさせられました。

私は世界中の素晴らしい物、事を堪能しながらも、やるべき事(油)は忘れない事が

幸せの秘訣だよ、と、、解釈しました。

理想と現実、2つは異なる事が多いですが、

その真ん中で調和を見ていく事も陰陽のバランスを見る事かなと思いますが、それに通ずる言葉に思えました。

 

楽しい事、つい夢中になって、周りが見えなくなってしまう事、誰だってありますよね。

目の前の事、楽しむ事は大事。でも油をこぼしてはいけないという、使命を心の隅に留めておく事も大事。

それが穏やかな幸せの秘訣なのかな。

 

ネットで調べてみると、解釈をブログにまとめている方がたくさんいらっしゃいました!皆さんそれぞれ様々で、いくつか読みましたがなるほどと思ってしまいました。

 

中でも、スプーンの油は自分の内面。

外側だけでなく内面を見つめる事を忘れないと書いている方がいて、いいなぁと思いました。

 

ヨーガ チッタ ブリッティ ニローダハ

.

心の作用を制御することがヨーガである

.

ヨーガスートラ第1章第2節。ヨーガ哲学において一番有名なこんな言葉があります。

心の作用とは、揺れ動く自分自身の心。何も変わらないのに自分の心が景色やあの人の気持ちまで決めてしまう。心の作用を制御できたなら、もっと楽にいまを生きることができる。

 

スプーンの油も簡単に揺れ動き、いつこぼれるかわからない不安定なものですね。

どんなに外側に意識が向いても内側を忘れない、と解釈すると、たしかにスプーンの油は自分自身なのかもしれません。

 

一通り読んで、何度か読み返そうと思っている本です。

 

もし興味があったら読んでみてください😊

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